中小企業経営力強化資金とは?その概要とメリット・デメリット
中小企業経営力強化資金とは創業融資のひとつで、日本政策金融公庫の制度です。これは起業する誰でも申請できるものではなく、日本政策金融公庫の認定支援機関を経由しないと利用することが出来ません。これは認定支援機関の助言や支援を受けている、ということが申請の必須条件になるから。この認定支援機関は正式には「認定経営革新等支援機関」といい、中小企業庁が定めたものになります。中小企業庁のHPから支援機関の一覧を見ることが出来ますが、税理士事務所のほとんどがこの認定を受けていると言っていいでしょう。
創業融資としてこの中小企業経営力強化資金は非常に魅力的です。そのメリットを説明する前に、この制度の概要をご紹介します。
ご利用いただける方 | 次の1または2に当てはまる方 1.次のすべてに当てはまる方 1.経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓 (新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方 2.事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新など支援機関による指導および 助言を受けている方 2.次のすべてに当てはまる方 1.「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方 または適用する予定である方 2.事業計画書を策定する方 |
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資金の使いみち | 「ご利用いただける方」に該当する方が、事業計画の実施のために必要とする設備資金および長期運転資金 |
融資限度額 | 直接貸付 7億2千万円(うち運転資金2億5千万円) |
利率(年) | 基準利率 ただし、「ご利用いただける方」の1に該当する方であって、次のすべてに当てはまる方は、 2億7千万円まで特別利率① 1. (1)「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方 2. または適用する予定である方 3. (2)「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」及び「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している方 ※なお、信用リスク・融資期間等に応じて所定の利率が適用されます。 |
ご返済期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金7年以内(うち据置期間2年以内) 担保・保証人等 • 担保設定の有無、担保の種類などについては、ご相談のうえ決めさせていただきます。 • 直接貸付において、一定の要件に該当する場合には、経営責任者の方の個人保証が必要となります。 • 5年経過ごと金利見直し制度を選択できます。 |
上記に記載がない部分を含め簡単に言うと、「認定支援機関の助言・支援を受けて申請する創業7年未満の企業であれば、最大2,000万円までが低金利かつ無担保・無保証で借りられる」制度、ということになります。日本政策金融公庫のもう一つの創業融資制度である「新創業融資制度」では設定されている「自己資金」に関して要件がないのも魅力的で、創業者にとって大変メリットの多い融資制度となっています。
創業者にとって魅力的なこの制度ですが、もちろんデメリットもあります。以下にメリット・デメリットをまとめました。
メリット | デメリット |
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2,000万円までは無担保・無保証 | 年に1回、経過報告が必要(2年間) |
自己資金要件がない | 精度の高い事業計画書が必要 |
支援機関による助言・支援が受けられる | 支援機関への報酬が発生 |
大きな資金を低金利で借りられる | 繰り上げ返済ができない |
返済期間が比較的長い |
一覧にしてもメリットの方が多く、デメリットのうち最初の2点は支援機関のサポートを受けられるため、大きな負担になることはありません。創業資金の融資を考えているのであれば、この制度を利用するべきと言えるでしょう。
融資を受けるまでの流れを確認しよう
実際に中小企業経営力強化資金を利用する、となった場合、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
①認定支援機関にコンタクトをとる
まずはとにかく連絡を取りましょう。電話でもメールでも無料相談でもなんでもいいです。この融資制度は認定支援機関を通して初めて申請できるものなので、数社とコンタクトを取り、自分と合う会社を見極めるのもいいですね。
②必要書類を作成する
融資申請のためには多くの書類を作成する必要がありますが、まずは「創業計画書」「事業計画書」「借入申込書」の3つを作成しましょう。これらの書類は日本政策金融公庫のHPからテンプレートと記入例がダウンロードできますが、いずれにせよ支援機関と相談しながら作成しましょう。会社によっては支援機関が作成してくれることもあります。審査通過のためにこの書類はとても重要なので、精度の高い書類を作成する必要があります。
③必要書類を準備する
②で作成する3つの書類以外にも、以下のような書類を用意します。
・過去2年分の源泉徴収票又は確定申告書
・設備投資の見積書(設備投資が必要な場合)
・履歴時効全部証明書(法人の場合)
・支払の明細書(すでに借入金がある場合。借入残高・毎月の返済額が分かるもの)
・運転免許証コピー
・通帳のコピー半年分
・印鑑証明書と同じ印鑑
・印鑑証明書
・水道光熱費の支払状況3か月分
・保険など投資がある場合、それがわかる書類
・店舗や自宅の不動産賃貸契約書(まだ契約していない場合は見積書)
④揃えた書類を認定支援機関へ郵送
上記の書類がすべて揃ったら、認定支援機関に郵送(もしくは持参)します。ここで書類の不備がないかがチェックされ、問題なければ公庫に郵送されます。
⑤面談
日本政策金融公庫で30分~1時間程度の融資面談が行われます。この日程は公庫の担当者と調整することが可能で、面談に同席してくれる認定支援機関もあります。服装はスーツで行く方が無難ですね。
⑥現地調査・融資決定
日本政策金融公庫の担当者が開業予定地を現地調査し、融資審査の合否が決定されます。融資が決定すると、契約書などの書類が公庫から送られてきますので、それらの必要書類に記載して公庫に返送します。資料が公庫に到着してから3営業日後に着金されますが、この時送り返した書類に不備があると再提出となり融資実行が遅れてしまいますのでよく確認しましょう。
融資を受けるための注意点をチェック!
創業者にとてもメリットの多い中小企業経営力強化資金ですが、融資を受けるために注意しておきたいことがいくつかあります。
①申請できない分野がある
非常に間口の広い制度ですが、唯一「フランチャイズに参加する形での開業」にだけは利用することが出来ません(一部利用できる業種あり)。フランチャイズオーナーになるために無担保・無保証で融資を受けたい場合には、同じ日本政策金融公庫の「新創業融資制度」がオススメです。
②ネットバンク不可
融資実行が決定されると着金となりますが、その際の銀行口座はネットバンクNGとなっています。それ以外の銀行口座を用意しておきましょう。
③経過報告の提出が必要
この制度を利用して融資を受けた場合、半年に一度は認定支援機関へ、年に一度は日本政策金融公庫への事業経過報告が必要になります。提出すべき期間は2年間。公庫への経過報告となる「事業計画進捗報告書」は、認定支援機関に作成を依頼することも出来ます。
④繰り上げ返済不可
受けた融資を繰り上げ返済することは出来ません。決められた期間に決められた金額できちんと返済しましょう。