審査が長い?お金がかかる?利用の際の注意点
信用保証協会を利用する上で、まず知っておかなければいけないデメリットとして①審査期間が長い②信用保証料がかかる、この2点が挙げられます。
①審査期間が長い
なぜ審査期間が長いのか。信用保証協会は融資をするのではなく保証をする機関で、実際の融資は金融機関で行われます。そのため信用保証協会の審査と金融機関の審査、二度の審査期間が必要となるからです。
審査から融資が降りるまでの平均的な期間
信用保証協会 | 日本政策金融公庫 | プロパー融資 |
---|---|---|
1〜2ヶ月以上 | 3週間程度 | 2週間程度 |
このように他の融資と比べてみても信用保証協会の審査は長いため、すぐに必要な事業資金などの融資には向きません。このくらいの審査期間がかかることを念頭に置いて資金計画を作る必要があります。
②信用保証料がかかる
「信用保証料」という言葉は、他の融資では聞かない言葉だと思います。信用保証協会の保証は金融機関で融資をしてもらうための保証代わりとなるものです。この保証の対価が信用保証料で、毎月金融機関に支払う利息とは別にかかるお金です。
では実際に信用保証料はどのくらいかかるのでしょうか。信用保証料は固定額ではなく融資額が大きくなればなるほど増えていきます。基本的には一括払いで融資額から保証料を差し引いた額が実際に入金されるのですが、その額は融資金額、保証期間、財務評価に応じて決まる保証料率をもとに計算した額となります。
区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
責任共有保証料率 | 1.90 | 1.75 | 1.55 | 1.35 | 1.15 | 1.00 | 0.80 | 0.60 | 0.45 |
※創業者や個人事業主で貸借対照表及び損益計算書を作成していない場合などは区分5の料率が適用されます。
例えば、融資金額:1,000万円、信用保証率:1.15%の場合
・保証期間12ヶ月(1年)だと 11万5千円
・保証期間60ヶ月(5年)だと 57万5千円
この金額が一括払いで支払う額の例です。手数料のようなものをイメージしていると、かなり高額なのに驚くかと思います。(原則一括払いですが、保証期間が2年を超える場合などは分割係数を掛けて割引された保証金での支払いもできます。)金融機関から直接融資が受けられれば、支払う必要のないお金だと思うとやはりデメリットになります。
メリットじゃないの?代位弁済について解説します!
代位弁済は金融機関に返済できなくなった時に信用保証協会が債務を肩代わりしてくれる制度です。肩代わりと聞くとメリットのように聞こえるかもしれませんが、もちろん債務が帳消しになるわけではなく、返済の相手が金融機関から信用保証協会に変わったということです。改めて信用保証協会に対しての返済計画を、面接・協議で決められることになります。面接では一括返済が求められます。しかしそもそも代位弁済が行われるということは金融機関で返済ができなくなったからであり、金融機関で返済できないものが信用保証協会に変わったから急に返済できるようになるなんてことはありませんよね。信用保証協会は慈善団体ではありませんので、回収するための現実的な話し合いをしていくことになります。そして回収が困難だとみなされると次のような現実が待っています。
①資産の差し押さえ、売却
現金での返済が難しい場合、資産が差し押さえられることになります。担保物権、特に事業資産でない担保物権がある場合は、その売却を強くすすめられます。
②差し押さえ物件の競売
物件の売却を拒否し続けていると、競売という手段をとられることになります。競売での売却価格はかなり安くなり、その売却額から競売の費用も差し引かれてしまいます。
③保証人、相続人へ請求
保証人がいれば保証人に返済の請求がいきます。仮に本人が「死亡」したとしても、その返済は相続人にまで及びます。返済を無視し続けても返済から逃れることはできないのです。完済以外に返済から逃れる方法としては「破産」か「死亡して相続人が全員相続放棄」といったところでしょうか。
ここまでになるケースは話し合いに失敗したり、返済を無視し続けたりした場合です。多くの場合、こうなる前に弁護士の力を借りて解決していくことになります。弁護士料など余分な費用がかかりますが、素人ではどうしようもできないレベルになっているので仕方がありません。
と、ここまでとても恐ろしい話しを書きましたが、もちろんすべてこのようなケースになるわけではありません。先ほども書きましたが信用保証協会は慈善団体ではありません。がしかし闇金のような取り立てをするわけでもありません。返済困難である状況がしっかり伝わり話し合いがうまくいけば、無理のない範囲で少しずつ返済できるよう調整してもらうこともできます。担保物権がない場合でも毎月コツコツ滞りなく返済することができれば、それ以上の無理な返済を迫られることもありません。ただし返済中は新規の融資を受けられないので注意が必要です。借入先だった金融機関以外でも受けられません。これは返済に充てるために借りる自転車操業を防ぐためでもあります。新規融資を受けずに代位弁済をしていくことは経営的には大変きついものになることは間違いありません。
信用保証協会の利用がリスクになる?その理由と対処法について
信用保証協会を利用した融資は、通常の銀行融資(プロパー融資)に比べ条件は悪くなりますが、やはり中小企業や個人事業主など信用や担保が不十分な人にとって融資が受けやすいのは心強いですよね。銀行側からみても万が一倒産などとなったときに信用保証協会を利用して貸していれば銀行が被るリスクが少なく済むため、プロパー融資よりも信用保証協会をすすめたがるのです。一見両者にとってメリットに思われるかもしれませんが、あまり考えずに信用保証協会を利用してしまうと後々リスクにつながる可能性があります。以下注意すべきリスクを2点にまとめました。
リスク①信用保証協会の融資には上限枠がある!
信用保証協会付き融資には8,000万円の上限枠(無担保の場合)が設けられています。「プロパー融資を断られたけど銀行にすすめられた信用保証協会の融資にしたら審査が通った、ならばこれで借りていけばいいや」と簡単に考えて借りてしまうと、本当に融資が必要な時に枠がいっぱいで借りられないということになりかねません。もし、本当に融資が必要な時=業績が厳しい時であれば、もちろん銀行での融資も断られるでしょうから、融資の道がなくなったも同然となってしまうのです。
リスク②今後信用保証協会しか利用できなくなる?
信用保証協会付き融資をトラブルなく返済。では次からは利息も低くなるプロパー融資でといきたいですよね。しかしこちらがそう考えても、銀行側からすれば信用保証協会の融資でいけるならそのままで、となりがちです。さらに銀行は数年単位で担当者や支店長が異動するため「前の担当が信用保証協会で融資をしていたなら今回も信用保証協会の融資で」となることもあります。自分がプロパー融資に切り替えたために損失を被ることになった、とはなりたくないのです。
これらの二つのリスクは信用保証協会1本で融資を受けたために起こるリスクです。信用保証協会の融資を上手に利用するためには、受けたい融資額の一部でもプロパー融資になるよう交渉してみましょう。もちろん創業間もない場合などは提示できる実績がなく信用もないため全額信用保証協会の融資になると思います。しかしその後に返済実績と業績UPで信用が作れればプロパー融資を受けるチャンスが生まれます。こうして信用保証協会の融資枠をできるだけ残すようにしておけば、万が一経営が苦しくなったときに、残っている枠を会社のたて直しに使うことができるのです。
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