公庫の二大創業融資。違いをメリットデメリットで比較しました!
日本政策金融公庫の二大創業融資といえば、「新創業融資制度」と「中小企業経営力強化資金」ですね。制度としては新創業融資制度の方が古く、中小企業経営力強化資金は比較的新しいものとなっています。この2つは何が違うのか、概要からメリットデメリットまで、一覧表で簡単に比較してみました。
新創業融資制度 | 中小企業経営力強化資金 | |
---|---|---|
2001年7月 | 制定時期 | 2013年3月 |
起業する方もしくは事業開始後税務申告を2期終えていない方 | 利用可能者 | 起業する方かつ認定支援機関の支援を受ける方 |
創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できる | 自己資金要件 | なし |
事業資金 | 資金の使いみち | 設備資金および長期運転資金 |
3,000万円(うち運転資金1,500万円) | 融資限度額 | 直接貸付 7億2千万円(うち運転資金2億5千万円) ※無担保・無保証は2,000万円 |
各種融資制度で定める返済期間以内 | 返済期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金7年以内(うち据置期間2年以内) |
融資制度、使いみち、融資期間、担保の有無などで異なる | 利率(年) | 基準利率 ただし条件を満たせば特別利率が適用 |
原則不要 | 担保・保証人 | 融資額2,000万円までは不要 条件によって経営者の個人保証が必要 |
この制度単体では利用不可※ | 注意点 | フランチャイズは利用不可 |
・最大3,000万円までは無担保・無保証 ・自己資金要件が緩い ・条件によって異なる利率が適用される |
メリット | ・2,000万円までは無担保・無保証 ・自己資金要件がない ・支援機関による助言・支援が受けられる ・大きな資金を低金利で借りられる ・返済期間が比較的長い |
・指定の融資制度を利用していることが条件 ・自己資金要件がある ・低金利というほど金利は低くない |
デメリット | ・年に1回、経過報告が必要(2年間) ・精度の高い事業計画書が必要 ・支援機関への報酬が発生 ・繰り上げ返済ができない |
※新創業融資制度は単体で融資制度として利用することは出来ず、公庫の指定融資である「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家資金」、「企業活力強化資金」などを利用して融資を受ける場合、条件を比較して創業者に有意な方を選択することが出来る制度です。
こうして比較してみると、それぞれの特徴がわかると思います。一見メリットの多さから「中小企業経営力強化資金」の方が創業融資としての評価が高くなりそうですが、新創業融資制度は公庫指定の融資を利用する場合の条件をより良くするための特例制度であることを考えると、利用する指定融資によってはこちらのメリットが多くなる場合もありそうですね。
創業融資制度は公庫だけでも多くの種類があるので、最終的に自分に合っているものがどれなのかを決定づけることが難しい場合には専門家に相談してみましょう。相談だけなら無料の場合がほとんどですし、支援契約を結んだとしても成功報酬であることが多いため損はないと思います。
創業融資の審査基準はこの4つ!
創業融資は日本政策金融公庫が制定しているものだけでも多岐にわたり、公庫以外の融資も含めると数多くの種類が存在します。ですが、審査基準はほとんど同じ場合が多いようです。では、その審査基準とはどのようなものなのでしょうか。
押さえておくべきポイントは4つあります。
②経験・能力
③返済可能性
④資金の使用用途
これらについて、それぞれ詳しく紹介します。
①自己資金
「中小企業経営力強化資金」のように自己資金要件がない創業融資も存在しますが、いま、自分の手元にどれだけの資金があるかは返済能力を考える上でも非常に重要です。創業者が借入金以外に用意した資金が「自己資金」で、創業にかかる全体資金のうち自己資金が占める割合を「自己資金割合」と呼びます。この自己資金割合は創業融資を申し込む際の要件として入っていることが多く、この割合を満たしているかは非常に重要な審査基準となります。この自己資金割合の確認のためとして、創業者は過去1年分の預金通帳の提出を求められます。「自己資金として申請された額と相違ないか」「ほかで借りたお金を自己資金として申請していないか」などが確認されるのです。ほかから大きな額を一括で借りた資金だった場合も、「その資金は借りものであって自己資金ではない」として認められないので注意が必要です。
②経験・能力
創業融資の審査は通常の企業融資と違い「過去の業績・実績」を見ることが出来ません。その代わりに創業者本人の経験や能力が見られることになります。これから創業しようとするビジネスに関する内容を過去どの程度経験しているのか、ということが審査されるため、全く未経験の事業を始めようとする場合は非常に厳しいでしょう。また創業者の経営能力などは判断できませんが、「お金にだらしなくないか」「きちんと金銭管理が出来るか」という能力は問われます。預金通帳を提出した際に税金や光熱費の延滞はないか、金銭面での不自然な動きはないかといった創業者の個人信用情報は必ず審査されますので気を付けましょう。
③返済可能性
どれだけ創業に積極的な日本政策金融公庫でも「返せる見込みのない事業」に融資はしてくれません。民間金融機関は言わずもがなですね。創業者の熱い思いや社会への貢献度の高さといった「情」で判断されることはないでしょう。この返済可能性は、融資申し込み時に提出する「創業計画書(事業計画書)」で判断されます。計画書には月平均の事業の見通しを書いていきますが、ここが何年も赤字続きの見込みだと返済可能性は低いと判断されてしまいます。月々の返済額を利益が上回っていないと返済できないわけですから、ここに妥当性と説得力のある説明がされていることが重要です。
④資金の使用用途
創業融資を利用する場合、そのお金の使いみちをすべて証明する必要があります。自己資金の金額問わず、創業資金の内訳を示した上で見積もりなどを用いて証明することになります。内装や設備などは施工会社からの見積もりで、また未契約の賃貸物件などの場合にはその物件のチラシなどを利用します。このように根拠のある資金用途の内訳が必要であることを考えると、初期費用のあまりかからないコンサルタント業などの場合には、創業融資が受けられないケースがあるということを忘れないようにしましょう。
公庫以外の融資も利用できる?検討可能な創業融資とは
日本政策金融公庫は税金で運営される政府系の銀行であり創業融資に積極的ですが、それ以外に「創業融資」として検討できるものはあるのでしょうか?
実は民間の金融機関から「創業融資」を受けることは非常に難しいです。民間金融機関は利益を上げる必要があるため、実績のないものには融資をしたがらないんですね。この場合、「保証協会付の融資」を検討することが出来ます。保証協会とは「信用保証協会」のことで、仮に創業者が融資の返済が出来なくなった時に代理で返済してくれるというものです。創業者は民間金融機関ではなく保証協会に返済していくことになるわけです。ただし保証料が必要になってしまうため、基本的には公庫の融資を検討することが一番であると言えそうです。