有名なのにわかりにくい?ものづくり補助金とは
2009年(平成21年)、「中小ものづくり高度化法」に基づいて始まった「ものづくり補助金」は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス革新補助金」といい、経済産業省と中小企業庁管轄の補助金です。毎年2~4万件近い申請があり、1万件前後が採択されるという非常に規模の大きいものであるため、補助金としては大変有名です。以下に平成30年度のものづくり補助金について概要をまとめましたので、ご確認ください。
目的 | 国際的な経済社会情勢の変化に対応し、足腰の強い経済を構築するため、生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための中小企業・小規模事業者の設備投資等の一部を支援 |
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予算規模 | 1,000億円 |
補助対象者 | 認定支援機関(経営革新等支援機関)と連携し、下記①②のいずれかを満たす事業者 ①「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善であり、3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。 ②「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用した革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行い、3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。 |
支援内容・支援規模 | ①企業間データ活用型 複数の中小企業・小規模事業者が、事業者間でデータ・情報を共有し、連携体全体として新たな付加価値の創造や生産性の向上を図るプロジェクトを支援。 【補助上限額】1,000万円/者※ 【補助率】2/3 ※連携体は10社まで。さらに200万円×連携体参加数を上限額に連携体内で配分可能。 ②一般型 |
補助対象の経費区分 | ①企業間データ活用型 および ②一般型 機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費 ※設備投資が必要。設備投資は、単価・税抜きで50万円以上の機械装置等を取得して納品・検査等を行う。 ※「機械装置費」以外の経費は、総額で500万円(税抜き)までが補助上限。 ③小規模型(設備投資のみ) 機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費 ※設備投資は、単価・税抜きで50万円以上の機械装置等を取得して納品・検査等を行う。 ③小規模型(試作開発等) 機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費、原材料費、外注加工費、委託費、知的財産権等関連経費 |
事務局 | 全国中小企業団体中央会 |
すべてのパターンにおいて、採択されたからといって必ず補助金が支払われるわけではないことに注意が必要です。採択された内容で支援事業が終了して初めて対象となるため、設備投資の納品遅延や許認可遅延など何らかのトラブルで期間外になってしまうと、「補助金が支払われない」ということも考えられます。ゆとりをもった計画を立てることが重要ですね。またものづくり補助金は認定支援機関の連携が必須要件となっており、申請代行や代筆などを依頼することがあると思います。万が一補助金が支払われなかった場合や支払うタイミングなど、支払いに関する契約条件はよく確認しましょう。
支援内容は3パターン
上記表内の支援内容①~③について、および全体的にわかりにくい部分をご説明します。
①企業間データ活用型
これは平成30年度に新設された支援パターンです。支援内容の適用例として、PR資料には「データ等を共有・活用して、受発注、生産管理等を行って、連携体が共同して新たな製品を製造したり、地域を越えた柔軟な供給網の確立等により連携体が共同して新たなサービス提供を行う取組など」とあり、連携体は10社まで可能です。仮に5社で連携したとすると、5社×200万円=1,000万円の補助金申請が可能になります。申請した補助金は連携体内で配分することが出来ます。
②一般型
通常1/2である補助率を2/3にUPするための注意書きとして記載がある「生産性向上特別措置法(案)(平成30年通常国会提出)に基づく先端設備等導入計画の認定」についてですが、実は「生産性向上特別措置法」自体が、平成30年5月16日に参議院本会議で可決、成立したばかりのため、「先端設備等導入計画」はまだこれから詳細が決定するということのようです。そのため、補助率UPのためにはほとんどの企業が「経営革新計画の承認」を受けるということになるでしょう。これは『3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%に加え、「従業員一人当たり付加価値額」(=「労働生産性」)年率3%を向上する中小企業等経営強化法に基づく』経営革新計画書のことで、承認申請には各都道府県の商工担当部局に問い合わせる必要があります。
③小規模型
補助率が小規模事業者かどうかで1/2~2/3と変動する小規模型ですが、小規模事業者かどうかの判断基準は以下のように決まっています。自社の事業分類と従業員数で確認してみましょう。
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
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製造業その他 | 従業員20人以下 |
商業・サービス業 | 従業員 5人以下 |
【全体】
支援パターン①~③すべてで適用されるものとして、「専門家の活用」で補助金額30万円UPという内容がありますが、この「専門家」は認定支援機関ではないことに注意しましょう。ただし、公募要領に書かれている「スマートものづくり応援隊」以外にどのような専門家が該当するのかは明確にはなっていません。規模の大きい補助金であるものの毎年要件が変わっているため、申請を検討する際には問い合わせをした方が安心ですね。平成30年度のものづくり補助金は、1次公募の期間は終了していますが2次公募があると言われているので、まめにチェックしたほうが良さそうです。
審査通過に重要なポイントはコレ!
通常補助金や助成金といった交付金は面談がありますが、ものづくり補助金はありません。申請書がすべてということになります。つまり、この申請書をどれだけ優れたものにするかが一番重要と言えます。審査においての加点ポイントは公表されているので、出来る限り対応したいものです。またこの補助金は認定支援機関の確認書が必須要件となっており、事業計画など支援機関と相談しながら作り上げていくことになります。出来る限り採択実績のあるところを選びたいですね。採択率100%でも取扱件数が数件だったり、逆に採択数が多くても採択率が低かったりするような支援機関は避けたほうが良いでしょう。また補助金はむしろ採択後がとても大変で、日々忙しい中で立てた計画通りに事業を遂行しなければなりません。採択後の提出書類も多く、その種類も多岐にわたるため、採択後の対応も支援機関の重要な選択ポイントとなります。