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直接金融と間接金融とは



事業を興そうとするときに必ずと言っていいほど悩むことのひとつが資金調達。先々の予定も見越して全額自己資金で賄える、という創業者は少ないでしょう。また仮にそうであったとしても、融資を受けておいた方が良い、とも言われています。この資「金」を「融」通する行為を「金融」というわけですが、金融には「直接金融」と「間接金融」の2種類があることをご存知でしょうか?海外では直接金融がとても盛んですが、日本では昔から間接金融がその大部分を占めてきました。これらについて知ることで、世の中の流れと自分に合った資金調達の方法を見極めるようにしましょう。

1.創業融資はこちらが多い?間接金融とは

まずは間接金融についてご説明します。日本で大部分を占めている金融の仕組みであり、実際に起業するときにはこちらが圧倒的に多いでしょう。
「間接金融」とは、金融機関が入ることで「間接」的に借り手と貸し手の間で「金」を「融」通すること。代表的なものは「銀行預金」です。銀行には多くの預金が集まります。その預金を銀行側は一括管理し、融資として貸し出しているわけです。間接金融の場合、貸し手(預金者)と借り手(事業主)はお互いのことを知りませんし、銀行がどのように運用しているのかも知りません。貸出金利は間に入る金融機関が決定し、融資などの運用の利息が銀行の利益になり、その中から貸し手である預金者に「預け入れ利息」という形で還元します。創業融資に積極的な政府系金融機関である日本政策金融公庫の場合は、創業者を借り手とした場合の貸し手は「国(税金)」ということになります。貸し手から見た代表的な間接融資は上記のように「銀行預金」ですが、借り手から見た場合には「銀行借り入れ」や「公的融資」が代表と言えます。
貸し手にとっての間接金融のいいところは金融機関が仲介に入っているため、仮に融資先の倒産といった運用破綻があったとしても、預金が減るリスクがほとんどないこと。一方借り手にとっての間接金融のいいところは、審査基準を満たし審査を通過すれば、誰でも借りられるところ。融資窓口が多いことも利点の一つですね。

2.増加傾向にある直接金融とは

次に直接金融についてご説明します。アメリカやイギリスでは早くから市場が整い、アメリカでは現在およそ90%が直接金融での資金の調達となっています。日本でも最近はインターネットやパソコンの高性能化・通信技術の向上によって直接金融が増加傾向にあります。
「直接金融」とは、借り手と貸し手が「直接」「金」の「融」通をすること。ただし、借り手が実際に「お金貸してくれませんか?」と投資家を探しまわるようなことはなく、直接金融の「市場」を利用します。そのやり取りを手伝ったり取り次いだりしてくれるのが「証券会社」。債券や株券といった「証券」をお金の代わりとして「市場」でやり取りするわけです。代表的なものは「株式」や「公募(IPO)」になります。
「証券会社」が間に入っているのだから「間接金融」なのでは?と思うかもしれません。しかし間接金融は貸し手のお金を銀行などの金融機関が一度取りまとめ、新たに借り手に金銭を振り分けて融通しますが、直接金融は貸し手と借り手の間に証券会社は入るものの、あくまで証券の取次だけで、証券会社が証券を発行しているわけではないので「直接」金融にあたるのです。ちなみに「投資信託」は、直接金融と間接金融の中間的な資金調達方法という位置付けで、「市場型間接金融」と呼ばれています。
貸し手(つまり投資家)にとっての直接金融のいいところは、銀行に預けるよりも高い利回りの配当や売買益が期待できるところ。一方借り手(事業主)にとっての直接金融のいいところは、融資の場合は必要となる担保や保証人が不要であるところ。事業が不調だと融資を受けるのは難しいですが、株式や社債は自社で発行するものなので、「発行すること」自体は業績に関係ありません。
 

3.借り手側からみた両者のメリット・デメリット

間接金融・直接金融ともに具体的に説明してきましたので、それらのメリット・デメリットを比較してみましょう。このメリット・デメリットを考える時に実はひとつ重要なことがあります。それは「借り手と貸し手、どちらの視点で考えるか」ということ。ここをはっきり意識しておかないと、なんとなくフワフワとした理解になり、判断を誤ってしまいます。創業融資として考えた場合は、「借り手の視点」でメリット・デメリットをしっかり確認するようにしましょう。

借り手の視点 メリット デメリット
間接金融(融資) ・審査基準を満たせば借りられる ・利息の支払いが必要
・細かく情報開示する必要がある
直接金融(有価証券の発行) ・担保や保証人が不要
・情報開示の量が少なくて済む
・利益が出れば配当金の支払いが必要
・株主に発言権がある

資金調達を考える企業(借り手)側から見た場合について上記のような表にまとめてみました。
間接金融(融資)は、民間金融機関にしろ政府系金融機関にしろ、借りるためには審査に通過する必要があります。一般的に、民間金融機関の審査は厳しく、政府系金融機関は民間ほど厳しくはないと言われています。いずれにせよ、審査に通過さえできれば融資を受けられることはメリットと言えます。ただし融資は「借金」ですから利息がつき、借り入れた金額よりも多い額を最終的には返済することになります。また審査のための必要書類が多く、自社の収支予定や実績などの詳細を金融機関につまびらかにする必要があり、これらがデメリットと考えられます。
一方直接金融(有価証券の発行)は、融資のように担保や保証人を用意する必要がなく、社債の場合は自社で条件を決められることがメリットです。また自社が発行するために第三者に情報開示する量が少なくて済むこともメリットであると考えられます。ですが利益が出れば当然配当金を株主などに支払う必要がありますし、なによりも経営に対して株主に発言権があるというのがデメリットになります。創業者の思う通りに事業を動かすことが出来なくなる危険性があるのです。そもそも株式や社債といった有価証券は、その企業自体の業績に魅力がないと買ってくれる人が現れないという問題があります。買ってくれる人がいなければ資金を調達できないわけで、これが「創業融資としての直接金融は難しい」と言われる所以です。
 
なお、貸し手の視点だと以下のようになります。

貸し手の視点 メリット デメリット
間接金融(銀行預金) ・基本的には元本保証
・すぐに現金化できる
・利息がかなり低い
直接金融(有価証券の購入) ・利回り高めの配当が見込める
・株主として株主総会に出席できる
・元本割れのリスクがある
・現金化するのに時間がかかる

詳細の説明は省きますが、それぞれのメリットとデメリットは表裏一体となっています。
 
資金調達を考えた時に、間接金融と直接金融のどちらが自社に向いているのか、可能なのかをよく見極めて、それぞれに合わせた準備をしていきましょう。企業によっては両方を組み合わせて利用する方法もあります。もしもどちらをどのように利用したらいいのか判断がつかない、決めたけれど具体的にどうしたらいいのかはわからない、という場合には、税理士事務所などプロに相談してみることも検討しましょう。相談だけでしたら無料のケースが多く、最終的に利用するかどうかは別としても第三者の意見を聞くことで自分の気付かなかったプラス面・マイナス面が見つかることもあります。