中小企業・経営者のための助成金、補助金、創業融資のサポートサイト サンジュウシ

美容室開業で受けられる融資制度ガイド



美容室の開業を目指す時に必ず直面する3つの悩みとは

 
美容師として働いていたら、きっと一度は思う「自分の店を持ちたい」という願い。自分の技術を高め、固定客も付き、立地条件などを調べ、「さぁ、独立するぞ!」となった時に必ず直面する問題があります。それは、美容室開業の際に利用することになる創業融資。多くの場合、創業に積極的な政府系銀行である日本政策金融公庫の創業融資を利用することになるでしょう。仮に公庫以外の融資を利用するとしても、創業時に直面する悩みは変わりません。なぜならそれは融資の審査に大きな影響を与える高いハードルだから。その悩みの種となるハードルは大きく分けて3つ。それらについて解説します。
 
①自己資金
美容室開業にはとてもお金が掛かります。ごく一般的な、シャンプー1席とセット面2席程度の小さな店舗での開業だとしても、必要経費はおよそ1,000万円といわれています。この費用のうち、どれだけ多くの自己資金があるかが創業融資を利用する際にはとても重要なポイントになります。もちろん全額自己資金で用意出来れば融資の必要はありませんが、ほとんどの場合は数百万の自己資金で開業することになるでしょう。この自己資金が多ければ借入額は少なくなり、毎月の返済額も少なくて済みます。逆に借入額が多ければその分返済額は多くなりますね。通常開業当初は顧客も少なく、リピーターになるには時間もかかるため売り上げは厳しい状況になります。返済額が多いと開業時は経営がとても苦しくなることが予想され、金融機関に「返済が滞る(場合によっては倒産する)」と判断されてしまいます。
さらに自己資金が少ないと、「本気で開業する気がない」と判断されかねません。自己資金がない=思い付きで開業しようとしている、という判断をされるのです。
「本気で開業を考えていて、しっかり準備している」と見てもらうためにも、自己資金額はなるべく多く準備する必要があるのです。目安としては、最低でも総費用の30%もしくは融資を受けたい金額の半分程度です。
 
②個人の信用情報
これは、「お金に対してキレイな体であるかどうか」ということ。せっかく自己資金を用意したとしても、税金や光熱費の未払い・延滞などがあると融資を利用することは難しいでしょう。具体的には「税金・水道光熱費を遅滞なく支払いしているか」「過去2年以内に消費者金融から借り入れをしていないか」「過去5年以内に破産などの債務処理をしていないか」などが確認されます。これらがあると、融資した借入金が返済されないリスクが高いと判断されてしまいます。なお、これらは融資審査の際に通帳を提出することになるのでごまかしは効きません。
 
③経験年数・内容
上記①②のお金に関することと違い、創業者の経験年数やその内容もとても重視されます。ただ長く美容師として勤めていた、という年数だけではなく、「何をやってきたか」という経験内容もチェックされるのです。というのも、美容室を開業するということは経営者になるということでもあるから。たとえどんなに美容師としてのスキルが高くても、経営にまったく知識がなくお金に無頓着ということであれば、融資を受けることは難しいですね。経営に近い経験、例えば店長やそれと同等のポストについていたという経験が必要です。
 

資金調達先として考えられる融資制度はこの4つ

 

 
では、開業に際しての資金調達先としてはどのようなものが考えられるのでしょうか。美容室開業時の創業融資としては4つの融資制度が考えられます。
 
①日本政策金融公庫を利用する
日本政策金融公庫は、創業に積極的な政府系の銀行です。公庫は多くの融資メニューを持っていますが、美容室開業でオススメするのは「生活衛生新企業育成資金」と「新創業融資制度」です。生活衛生新企業育成資金は、生活衛生同業組合に加入しているかどうかで受けられる融資の内容・金額に違いがあります。加入していれば設備資金と運転資金の両方が、加入していなければ設備資金のみ融資が受けられます。ともに利率は低く、開業時に利用する融資として最適です。また新創業融資制度は生活衛生新企業育成資金を利用する場合に適用可能な特例で、3,000万円まで無担保・無保証で融資を受けることが出来ます。
 
生活衛生新企業育成資金の概要は以下の通りです。

ご利用いただける方 生活衛生関係の事業を創業する方又は創業後おおむね7年以内の方
振興計画認定組合の組合員の方 左記以外の方
資金の使いみち 設備資金および運転資金 設備資金
融資限度額 振興事業貸付の融資限度額
設備資金 1億5,000万円~7億2,000万円
運転資金 5,700万円
一般貸付の融資限度額
設備資金 7,200万円~4億8,000万円
ご返済期間 設備資金 20年以内
運転資金 7年以内
<うち据置期間2年以内>
設備資金 20年以内
<うち据置期間2年以内>
※日本政策金融公庫HPより一部抜粋・引用
※融資限度額は職種によって、利率は適用条件によって異なります。

 
②制度融資を利用する
制度融資とは、地方自治体(都道府県・市区町村)が行っている融資で、事業者が返済できなくなった時に立替返済してくれる「信用保証協会」の保証がついたものになります。保証料を支払う必要がありますが、地方自治体によってはお得な条件で融資を受けられる場合があるので、一度チェックするといいですね。開業する地域の役所窓口やホームページから確認することが出来ます。
 
③銀行融資を利用する
創業融資として民間金融機関である銀行の融資を得るのは、実は大変難しいです。税金で運営している日本政策金融公庫のような政府系銀行と違い、利益を確保しつつ返済不能のリスクを最小限に抑えないといけないから。そのため民間の銀行融資で利用できる可能性のあるものは、上の制度融資同様、信用保証協会の保証の付いた融資メニューとなります。こちらも利用するには保証料を支払う必要があります。
 
④リース契約を利用する
設備を購入するための資金調達をするのではなく、設備自体を賃貸借契約にしてリース料をリース会社に支払うことも資金調達方法のうちのひとつです。リース会社の利益が上乗せされるため支払う金額は高めになりますが、リース期間を短めに設定することで設備の陳腐化を防ぐことが出来ます。なお、リース期間の途中で解約することは出来ない(解約料を支払い、リース残金を一括支払いすれば可能)ため、期間の設定には注意が必要です。
 

融資制度を利用するために確認しておきたいポイントは

美容業界の規模は2兆円以上、理美容室の件数に至ってはコンビニエンスストアの約4倍ともいわれています。一時期話題になったデータに「サロン生存率」がありますが、これによると「開店1年以内に60%のサロンが閉店し、3年以内に90%が閉店する。20年続けられるサロンは0.3%、30年以上営業を続けられるサロンはなんと0.02%」とされています。このサロン生存率には根拠となるデータがないのですが、実際の出店数及び閉店数などから計算すると、おおむね近い数値が出るようです。
このデータのように廃業しないためには、融資を利用する際に提出する創業計画書(事業計画書)を綿密に作り上げることが重要です。見積もりが取れるところからはきちんと取り、計画書内の数字について的確に説明できるようにしましょう。自分だけで作り上げることが難しい場合には、税理士事務所など支援機関のサポートを受けるといいですね。支援を受けることで書類不備がなくなり、計画書作成の代行をしてもらえる場合もあります。支払う報酬も融資の成功報酬であることがほとんどですので安心です。