中小企業・経営者のための助成金、補助金、創業融資のサポートサイト サンジュウシ

銀行との正しい付き合い方は



銀行との付き合い方〜基本編〜銀行と付き合うってどういうこと?

「借金をしないで経営すれば銀行なんて関係ないじゃないか」「借金するほどピンチじゃないから銀行なんて関係ない」・・・こんなふうに銀行と無関係に事業を成り立たせることがいい経営だと考える人もいるかもしれませんね。しかし銀行からの借金は銀行のいいなりになることではありません。銀行と対等に付き合うことで融資という資金を得て事業を伸ばすことができるのです。企業が銀行からお金を借りること=融資は個人が借金することとは意味が違うのです。
 
①事業のタイミングを逃さずにすむ
例えばこれから伸びる市場にいち早く参入するための資金が1,000万円必要だとします。手元にすぐに使える1,000万円がなければ、何年もかけて利益を出して貯めなければなりません。ようやく貯まった頃には市場に参入するうま味はなくなっているでしょう。いま!というタイミングを逃さないために融資を利用するのです。
②レバレッジ効果
レバレッジ効果とは、簡単にいうと自分のお金と借金を合わせて投資すれば、自分のお金だけで投資するよりも大きな効果を得られるということです。例えば自己資金で仕入れられる原材料が10個のみだとします。でも融資で得た資金を合わせれば100個仕入れることができる、となれば数が多い分仕入れ時に値引き交渉ができます。値引きができれば、その分商品の価格を下げて売り上げを伸ばすことができたり、そのままの価格で売った場合でも今までよりも収益を増やすことができます。
③信用力がつく
借金と聞くとイメージはよくないかもしれませんが、銀行からの融資は社会的な信用力がつきます。それはなぜかというと、銀行は貸し倒れリスクをできるだけなくすために、基盤が安定した会社にしか融資をしません。そのため融資を受けているということは、銀行の厳しい審査を通った=安定している会社だと社会的に信用されるのです。
 
このように融資とはマイナスをゼロにするものではなく、マイナスやゼロから事業を伸ばしてプラスにしていくための資金なのです。とくに③については、個人だとマイナスイメージになる借金ですが、融資の場合信用力がつきます。こうした融資を受けるためには、銀行と正しく付き合うことが必要になるのです。
 

銀行とのつきあいかた〜実践編〜正しく付き合う方法とは

では実際に銀行と付き合ってみようと思ったら何をすればいいのでしょうか。まずは取引を重視したいと思っている銀行をメインバンクにし、そこから信頼関係を深めていくのが正攻法です。具体的に説明していきましょう。
①メインバンクをつくる
メインバンクをつくるとは、銀行に「メインバンクにします」と申請することではありません。企業側が「〇〇銀行をメインバンクにしよう」と一方的に考えるだけです。そのため銀行に「うちがメインバンクになっている」と思ってもらえるように利用することが必要になります。
・当座預金の口座を作る
当座預金は簡単に開設できる普通預金と違い、銀行の審査が通らないと開設できません。当座預金の口座を持っていることは、銀行から信用を得ている証明にもなります。
・社員の給与振込や財形貯蓄などを利用する
会社全体で取引をしているという印象を持ってもらえます。
②コミュニケーションをとる
定期的に(数ヶ月に一度くらい)会社の業況を担当者に説明しコミュニケーションをとっておきます。年に一度は決算報告もしましょう。事前にアポイントメントをとって社長自らが支店長に報告をします。
 
このような取引や行動をしていれば「お宅の銀行をメインとして利用していますよ」というサインになります。またメインバンクに企業のお金の流れや財務状況をわかってもらいやすくなるので、融資が必要になった時にも前向きに相談にのってくれる可能性が高くなります。そしてポイントは②のコミュニケーションです。形に残るものではありませんが、銀行との信頼関係を築いていくのに一番重要で、融資を引き出すポイントになります。
 
次に①メインバンクをつくっても②コミュニケーションができていない、銀行から嫌われてしまう付き合い方を紹介します。このような行動には注意してください。
・借りたい時にだけ借りに行く
資金が必要になった、では銀行へ。これですぐに融資をしてくれる銀行はありません。信頼関係がなければ、銀行は信用して融資をしてくれませんし、そもそもお金が足りないから貸して、では本当に利息をつけて返済できるの?と疑われてしまって終わりです。
・悪い情報は伝えず、いい情報ばかりを伝える
悪い情報(業績が下がり気味、決算内容がよくないなど)は伝えたくない、という気持ちはわからなくはないですが、銀行は隠し事や嘘を大変嫌います。いいことばかり報告されてもかえって怪しまれてしまいます。
・書類が提出できない
融資を受けたいと意志表明をしても、肝心の決算書や試算書、資金繰り表など基本の財務諸表が作成されていないと経営内容が不透明だと見なされてしまいます。
・融資を受けてもその後の報告をしない
一度借入をしたら、借りっぱなしで決算書の報告のみ、という企業は意外に多いといいますが、融資をした側である銀行は、きちんと返済してくれるかどうかを気にしています。返済中でも現在の経営状況の報告をしていれば、次の融資にもつながります。
 
企業にしてみると日頃からコミュニケーションをとることは面倒かもしれません。しかしいざ融資が必要というときに強い力になるのが、このようにコミュニケーションをとって付き合うことなのです。

銀行とのつきあいかた〜応用編〜お互いにリスクを減らす付き合い方とは 

実践編ではメインバンクについて説明をしましたが、安定した経営という観点から考えるとメインバンク一行だけの取引にはリスクが伴います。一般的にはメインバンクの他に複数のサブバンクを持ってリスクを減らすのが理想です。これを複数行取引といいます。企業側、銀行側双方の複数行取引がもたらす効果をみてみましょう。
 
【企業側】
①一行取引の場合、もしメインバンクが破綻してしまったら資金調達の綱が切れてしまいます。一つの綱が切れてしまったとしても、他に何本もつながっている綱があれば安定します。
②他行からの融資が、メインバンクの融資よりもいい条件であれば、メインバンクが今まで以上の条件を提示してくることもあります。条件が悪ければ他行に融資を取られてしまうという競争意識が働くからです。
③他行から融資を受けたという事実は、優良企業だという社会的信用がさらにあがります。
 
【銀行側】
①融資先が倒産などで返済不能になった時に、自分の銀行だけが融資をしていたらその損失をすべて被らなければなりません。複数の銀行で融資をしていればその損失も分散されるためリスクも少なくすみます。
②銀行は支店長が変わると方針がガラッと変わることがあります。その方針によっては今まで融資していた企業から融資を引き上げなければならないことも出てきます。自分の銀行が融資を引き上げてしまうことで、経営破綻に追い込む結果にはなりたくありません。複数行取引がされていれば、その状況を回避することができるのです。
 
このように複数行取引には、企業側だけでなく銀行側にもリスク軽減のメリットがあります。しかし企業側からすると他行から融資を受けることをメインバンクには伝えにくいかもしれませんが、付き合いのあるメインバンクにはきちんと伝えた方がいいでしょう。もちろん黙っていてもいいのですが、いずれ決算書などでわかることです。包み隠さずちゃんと話してくれたという姿勢が評価されることもあります。
 
一方、複数行取引がマイナスに働いてしまう場合もあります。「他行に融資を申し込んだら断られてしまった」「どうにかして受けられた他行の融資が今までの融資よりも条件がよくなかった」。そんな情報は別の銀行にもまわります。あの企業は業績が悪いのかもしれないと警戒され、今までの融資を引き上げられてしまう可能性もあります。何が何でも取引銀行を増やせばいいというものではありません。業績がいいとき、余裕があるときにこちらから持ちかけてみる、あるいは銀行側から「うちで融資をしますよ」と声がかかることもあります。そういったタイミングで増やしていくといいでしょう。
 
最後に注意してほしいこと、それは融資の借り換えはやってはいけない!ということです。他行から新たに融資を受けることはいいのですが、今受けている融資を別の銀行にそのまま借り換える、これは今まで借りていた銀行への裏切りと思われてしまいます。取引銀行ではない銀行員が、魅力的な融資条件を提示してくることもあるかもしれません。そこで条件がいいからとあっさり借り換えてしまうと、今まで築き上げてきた取引銀行との信頼関係は一気に崩れてしまいます。取引銀行をコロコロ変える企業は最終的にどの銀行にも信用されなくなってしまいます。よっぽどのことがない限り、借り換えだけはしないようにしてください。