なぜ社労士?助成金のサポートは何をしてくれるの?
一般的に「助成金」といえば厚生労働省管轄の雇用関係助成金になりますが、返済不要の資金として、助成金は要件が合うのならぜひ利用したい制度のひとつです。ですが申請する助成金には細かい要件があり、さらに申請する事業主自体にも要件があります。事業を興したばかりの頃は本当に忙しいですから、「申請したくてもそこまで手が回らない!」というケースも多いですよね。「目の前のことで手が一杯になってしまって、書類関係は後回しにしていたら期限が過ぎていた」「忙しい中準備したのに実はそもそも対象外だった」なんて事態は避けたいもの。そんな時は、外部に助成金申請のサポートお願いしましょう。ここでは誰にお願いしたらいいのか、実際にはどんなことをしてくれるのか、ご紹介します。
①誰に頼めばいい?
助成金の申請サポートをお願いするなら、社会保険労務士(社労士)に依頼しましょう。サポート内容にも関係しますが申請代行までお願いする場合、その業務は社労士しか出来ない「独占業務」なのです。これは労働基準法や雇用保険法といった労働に関する50以上の法律を含む労働社会保険諸法令に基づいており、助成金の申請書作成および行政機関への提出が出来るのは社労士のみと決められているのです。ちなみに補助金の申請代行は、社労士以外でも行政書士やベンダー企業が代行できることがあります。
②どんなことをしてくれるの?
上記にもご説明した通り、助成金申請書の作成や申請代行をしてくれます。加えて助成金は国や行政の政策によって条件や内容が変わることも多く、忙しい創業者が常に最新の助成金情報を入手するのは難しいですね。その点、社労士にサポートを依頼することで「自社に当てはまる(=申請可能な)最新の助成金情報」を把握することができます。また助成金を申請した場合の会社への影響について相談できることも助かります。例えば「50歳以上定年未満の有期契約労働者を無期雇用に転換」することで1人あたり最大60万円助成されるという助成金(65歳超雇用推進助成金 高年齢者無期雇用転換コース)がありますが、この助成金を受給するために要件を満たした場合の将来的な負担などの説明を受けることが出来ます。その説明を聞いた上で、それでも助成金受給のために社内規定を変えるのか否かを検討することが可能になります。
助成金の申請には雇用契約書や賃金台帳、就業規則などが求められます。これら以外にも助成金によって必要な書類があり、逐一調べて用意するのはとても大変ですね。ですが、社労士のサポートを受けることで必要書類も教えてもらえますし、効率的に準備出来るようになります。
報酬はいくらぐらい?社労士の相場
助成金の申請代行を社労士に依頼した場合、大体いくらぐらいかかるものなのでしょうか。社労士事務所によっていくつかパターンはあるものの、「着手金(初期費用)+成功報酬(獲得助成金の○%)」もしくは「成功報酬(獲得助成金の○%)のみ」の2種類が多く、一般的な相場は以下の通りです。
報酬パターン | 着手金 | 成功報酬 |
---|---|---|
着手金+成功報酬 | 2~10万円 | 助成金入金額の10~20% |
成功報酬のみ | なし | 助成金入金額の15~25% |
補助金の場合は申請しても通らないケースがあるため「着手金」を支払うとマイナスになってしまうことがありますが、助成金の場合は申請出来ればほぼ獲得できるため、マイナスになることはありません。では、実際にはどのパターンがお得なのでしょうか。安かろう悪かろうでは困ってしまいますが、助成金額が100万円だった場合を想定して計算してみました。
助成金額 | 着手金 | 成功報酬 | 成功報酬額 | 会社に残る額 | |
---|---|---|---|---|---|
社労士事務所A | 100万円 | 2万円 | 20% | 20万円 | 78万円 |
社労士事務所B | 10万円 | 10% | 10万円 | 80万円 | |
社労士事務所C | なし | 20% | 20万円 | 80万円 |
この結果を見ると、社労士事務所BとCの「会社に残る額」が同額になります。どちらを選んでも同じ、ということになりますね。ですが、ひとつ注意すべき点があります。それは「顧問料金」。これは年間の顧問契約料金ということで、成功報酬の低さを謳う会社が後出しで言ってくることがあるのです。仮に事務所Bの年間顧問料が15万円だとすると、以下のようになります。
助成金額 | 着手金 | 成功報酬 | 成功報酬額 | 年間顧問料 | 会社に残る額 | |
---|---|---|---|---|---|---|
社労士事務所A | 100万円 | 2万円 | 20% | 20万円 | なし | 78万円 |
社労士事務所B | 10万円 | 10% | 10万円 | 15万円 | 65万円 | |
社労士事務所C | なし | 20% | 20万円 | なし | 80万円 |
事務所BはAよりも残金が少なくなってしまいます。成功報酬20%と聞くと「ちょっと割高だな…」と思うかもしれませんが、顧問料がなければ一番会社に残る金額が多いというのはよくあることなのです。社労士事務所に申請代行の見積もりを依頼する時には、着手金や成功報酬%のほかに、「年間顧問料のようなほかにお金がかかる内容がないかどうか」をきちんと確認するようにしましょう。
後悔しないために!社労士を選ぶポイントは5つ
依頼する内容もわかった、報酬の相場もわかった、では一体なにをポイントに社労士を選んだらいいのでしょうか。前項の報酬の部分で「成功報酬%の低い会社は顧問契約料の後出しが多い」というお話をしましたが、顧問契約自体は決して悪いものではありません。「お金の専門家」である税理士や「法律の専門家」である弁護士と同様に、社労士も「人に関する専門家」として会社とは長い付き合いになるでしょう。だからこそ、「助成金の申請代行報酬」というスポットの料金ではなく、じっくり自分に合う社労士を見付けてほしいのです。以下のようなポイントを参考に、ぜひ信頼できる社労士を見つけて下さい!
①専門分野が明確
医者や弁護士に専門分野があるように、社労士にも専門(得意)分野があります。人に関する専門家である社労士の業務は雇用保険や就業規則、労災保険といった従業員に関係するものから、賃金・年金制度の構築や各種助成金の申請まで非常に幅広くなっています。そのため、「手続き関係に強い社労士」「労使のトラブルに強い社労士」「助成金に強い社労士」と得意分野もさまざまになります。自社の課題に対して必要な社労士を選ぶようにしましょう。
②料金体系が明確
社労士の業務は、成果物として目に見えるものではありません。非常に費用対効果の見えにくいものだと言えますが、作業としての料金表はきちんとした社労士事務所であれば必ず持っています。「やってみないとわかりません」「基本料金はこれで、後は実際の作業で大きく変動します」といったあいまいな社労士事務所には依頼しない方が安全です。
③事務所の概要が明確
事務所がどこにあるのか、社員は何人いるのか、どの程度の規模の業務を担当したことがあるのかといった「事務所の概要」が明確なところを選びましょう。社労士に依頼する業務は守秘義務があるものが多く、事務所の管理体制などがしっかりしているかどうかも判断基準となります。
④経歴が明確
これは○○大学卒業といった学歴ではなく、どのような種類の案件をどの程度担当してきたか、という経歴になります。事務所が抱えている社労士の経歴がわかる方が安心ですね。これによって①の専門分野も明らかになります。
⑤説明が明確
難しい専門用語ばかりを使用して、忙しい創業者を煙に巻くような社労士は避けましょう。本当に頭のいい人というのは、難しいことをわかりやすい言葉で説明してくれるものです。こちらの話をきちんと聞いてくれて、その解決策を簡潔に説明してくれる社労士が理想ですね。