新創業融資制度とは?その概要とメリット・デメリット
「新創業融資制度」とは日本政策金融公庫の創業融資制度の一つです。この公庫の融資制度としては2013年3月に制定された「中小企業経営力強化資金」が比較的新しい制度として話題ですが、新創業融資制度はその10年以上も前、2001年7月に制定されています。そのため、「公庫の創業融資」といえばこの制度を思い出す人も多いと思います。ですが実はこの制度、単体では利用できません。どういうことなのでしょうか?
まずは「新創業融資制度」とは、どのようなものなのか、概要を見てみましょう
ご利用いただける方 | 次の1~3のすべての要件に該当する方 1.創業の要件 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方 2.雇用創出等の要件(注1) 「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方) なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。 3.自己資金要件 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方 ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします(注2)。 |
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資金の使いみち | 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
ご返済期間 | 各種融資制度で定めるご返済期間以内 |
利率(年) | 融資制度、お使いみち、ご融資期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。 |
担保・保証人 | 原則不要 |
ご利用いただける融資制度 | 「新創業融資制度」は、次の各融資制度をご利用いただく場合にお取り扱いできる無担保・無保証人の特例措置です。 • 新規開業資金 • 女性、若者/シニア起業家資金 • 再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金) • 新事業活動促進資金 • 食品貸付 • 生活衛生貸付(一般貸付、振興事業貸付および生活衛生新企業育成資金に限ります。) • 普通貸付(食品貸付または生活衛生貸付(一般貸付)の対象となる方が必要とする運転資金に限ります。) • 企業活力強化資金 • IT資金 • 海外展開・事業再編資金 • 地域活性化・雇用促進資金 • 事業承継・集約・活性化支援資金 • ソーシャルビジネス支援資金 • 環境・エネルギー対策資金 • 社会環境対応施設整備資金 • 企業再建資金(第二会社方式再建関連に限ります。) |
(注1)詳しくは、日本政策金融公庫HPをご覧ください。
(注2)事業に使用される予定のない資金は、本要件における自己資金には含みません。
(注3)実質的な経営者である方や共同経営者である方を含みます。
簡単に言うと、「公庫指定の融資制度を利用している場合に限り、比較的低い自己資金の割合で、最大3,000万円までが無担保・無保証で借りられる特例制度」、ということになります。
次に、この制度のメリット・デメリットを見てみましょう。
メリット | デメリット |
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最大3,000万円までは無担保・無保証 | 指定の融資制度を利用していることが条件 |
自己資金要件が緩い | 自己資金要件がある |
条件によって異なる利率が適用される | 低金利というほど金利は低くない |
日本政策金融公庫は創業融資に積極的でメリットと同じ数のデメリットではありますが、民間金融機関では創業時の融資は受けにくいことを考えると、起業の際には利用しやすい制度だと言えます。また日本政策金融公庫のもう一つの創業融資である「中小企業経営力強化資金」では利用できなかったフランチャイズとしての創業でも申請できるのは魅力的ですね。
融資を受けるために一番重要なポイントは?
新創業融資制度を利用して融資を受けるためには多くの書類を提出して審査を受けるわけですが、審査通過のために一番重要なポイントは一体何でしょうか?
ここでまず、申請のために必要な書類を見てみましょう。
これは公庫指定の書式があります。代表者名や会社名、所在地、借入希望額、借入希望日などを記入するもので、公庫の各支店窓口で入手するか、HPからダウンロードして作成します。
②創業計画書(事業計画書)
ここには創業者の起業の動機や経歴、取扱商品・サービス、取引先などを記入します。こちらも公庫の各支店窓口かHPから入手できます。
③融資を受けたお金の使用用途に設備資金がある場合はその見積書
内装工事の施工会社や設備導入予定の会社に見積書を作ってもらいましょう。
④定款の写し(法人の場合)
法人設立登記の際に作成した定款のコピーを提出します。
⑤履歴事項全部証明書(法人の場合)
法人設立登記後に法務局で入手できます。
⑥その他の補足資料
店舗の地図や物件の資料などです。
上記の中でもっとも重要な書類は②創業計画書(事業計画書)です。この書類で審査の合否が決まると言っても過言ではないほどで、つまりこの書類の内容が「融資を受けるために一番重要なポイント」となります。単に空欄を埋めるだけでなく、公庫の担当者に「この事業は成功しそうだ」と思わせる内容にしましょう。いくら日本政策金融公庫が創業に積極的と言っても、成功しそうにない事業には融資しません。「事業が成功するかどうか=貸したお金が返ってくるか」を総合的に判断されますので、創業計画書は起業に対しての強い思いや成功するための長期的なビジョン、成功すると信じられる根拠を織り交ぜながら作成しましょう。
新創業融資制度の申請書類は創業者が自分で用意することになりますが、創業計画書の内容に不安を感じたら、専門のサポートを依頼するという方法もあります。これらは成功報酬であることがほとんどで、書類を提出した後に待っている公庫との融資面談についても相談に乗ってもらえます。リスクもなく審査通過の確率を上げることが出来るという点では、検討する価値がありますね。
融資を受けるための注意点をチェック!
「新創業融資制度」について書かれているサイトは多数ありますが、一番重要でありながらなぜかあまり記載されていない注意点があります。
それは、「新創業融資制度」という融資を単体で申し込むことは出来ない、ということ。なんとなく他の創業融資と同じように紹介されていることが多いですが、全く性質が異なります。
最初の日本政策金融公庫HPから抜粋した概要にも記されていますが、「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家資金」、「企業活力強化資金」など公庫指定の融資を利用するときに、その融資条件よりも「新創業融資制度」の条件の方にメリットがあれば、新創業融資制度の条件で融資を利用することが出来る、という特例なのです。
「既存の融資をより好条件で利用できるようになる特例」であるということに注意しましょう。