IT導入補助金とは?補助対象になるものはコレ
「IT導入補助金」は、正式名称を「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といい、経済産業省管轄の補助金です。2017年度から開始された新しい補助金のため認知度不足であることは否めませんが、認定を受けたソフトウェアやサービスなどのITツールを導入するときに、その導入経費の一部を補助してくれるというとても魅力的な補助金です。これからはITと無縁ではいられない世の中ですから、ITサービス導入の際には一度検討してみることをおすすめします。
そもそもIT導入補助金とは、どのようなものなのでしょうか。前回と比べ平成30年度の補助対象者の要件はとても多く感じますが、中身はそんなに難しいことはありません。以下、概要を表にまとめました。
補助対象者 | 以下の要件を満たす事業主 ①中小企業・小規模事業者等であること。 ②日本国内で事業を行う個人または法人であること。 ③風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営む者でないもの。 ただし、旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項に規定する許可を受け旅館業を営むもの(風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営むものを除く。)を除く。 ④申請者(中小企業・小規模事業者等)またはその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会的勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等資金提供を受けている場合も対象外とする。 ⑤申請者(中小企業・小規模事業者等)の労働生産性(※)について、補助事業を実施することによって3年後の伸び率1%以上、4年後の伸び率1.5%以上、5年後の伸び率2%以上またはこれらと同等以上の生産性向上を目標とした計画を作成すること。原則として、労働生産性の向上を目標とした計画及び導入するITツールによる生産性向上指数に類する独自の数値目標を作成すること。 ※粗利益(売上-原価)/(従業員数×1人当たり勤務時間(年平均))により算出 ⑥独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかの宣言を行うこと。また、宣言内容の確認に際し事務局が一部の交付申請情報を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と共有することに同意すること。 ⑦補助金交付申請内容については、「IT導入支援事業者を含む“第三者”による総括的な確認」を受けること。 ⑧IT導入支援事業者を通じて、生産性向上に係る情報(売上、原価、従業員数及び就業時間)等を事務局に報告すること。 ⑨補助事業に係るすべての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。 ⑩経済産業省から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられていない者であること。 ⑪本事業における「IT導入支援事業者」に登録されていない者であること(昨年度の事業においてのみ登録されている場合は、この限りではない)。 |
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以下の要件を満たす事業 ①日本国内で実施される事業であること。 ②IT導入支援事業者が登録するITツールを導入する事業であること。 |
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補助対象のITツール | あらかじめIT導入支援事業者が事務局に登録し、認定を受けたITツール |
補助対象の経費区分 | ソフトウェア、クラウド利用費、導入関連経費等 |
補助金額 | 上限50万円、下限15万円、補助率1/2以下 |
各項目について、わかりにくい部分を簡単に説明します。
【補助対象者について】
①は業種・組織形態によって具体的に資本金と常勤従業員の人数が決められています。例えば「小売業であれば資本金5,000万円以下もしくは常勤従業員50人以下」「ソフトウェア業又は情報処理サービス業であれば資本金3億円以下もしくは常勤従業員300人以下」といった形です。
⑥の「SECURITY ACTION」は、「情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する」制度です。IT補助金のHPから宣言することが出来ます。
⑦は、つまり事業主だけでは申請できないということです。申請の際には「事業主」が事業計画を作成し、「IT導入支援事業者(=ITツールを提供するベンダー企業)」が導入するツールについての情報を入力し、両者が確認した後、「IT導入支援事業者が事務局へ代理申請」するのです。
【補助事業について】
申請する事業主が「認定を受けたITツールを導入する場合」という意味です。
【補助対象のITツールについて】
「認定を受けたITツール」は、IT導入補助金ホームページにある「ITツール選定ナビ」から探すことが出来ます。導入したいツールの内容(ホームページを制作したい、在庫管理をしたい、顧客管理をしたい、など)を選ぶことで、そのツールを提供しているベンダー企業を探すことが出来ます。逆に、この検索結果に出てこないツールだと補助対象外となるので注意しましょう。
【補助金額】
前回(上限100万円、2/3以下)と比較すると大幅に下がった今回の補助金額。そのかわり、総予算を前回の100億円から500億円の5倍増とし、利用企業数も前回の1万5,000社から13万5,000社と9倍になっています。浅く広く、多くの事業主が利用できる補助金となっているのです。
申請の流れとスケジュールを把握しよう
IT導入補助金は事業主だけでは申請できないため、自分のペースだけで進めることは出来ません。ITツールを導入する際には「ツール自体の良さ」もさることながら、スムーズにやり取りできるIT導入支援事業者(=ITツールを提供するベンダー企業)を選ぶことも重要ですね。
申請までの流れは以下のようになっています。
申請者②の「経営診断ツール」とは、自社の情報を入力して経営状態や抱える課題を把握するためのものです。決算期や売上高、従業員数といった決算期情報の入力と、選択式(一部入力)の非財務情報があります。この結果に出力される「診断結果ID」が申請には必要となるため、必ず診断しましょう。その後、「ITツールの選定」(選定用のツールはIT導入補助金のホームページにあります)後に導入するツールが決定すると、商談・交付申請の作業に入ります。交付決定の連絡が来て、補助事業が完了した後には「事業実績報告」をします。これによって補助金額が決定するのです。またこの補助金は、補助金の交付を受けた後も「事業実施効果報告」として事業実施後5年間にわたって事務局に報告する必要があります。報告内容は「毎年4月1日から翌年3月末日までの1年間における生産性向上等に関する情報」となっています。
今回の補助金は公募機会が3回あり、1回目で交付されなくても2回目・3回目と再チャレンジできるため、早めに準備するようにしたいですね。3回分の公募スケジュールは下記の通り予定されています。
一次公募 | 交付申請期間 | 2018年4月20日(金)~2018年6月4日(月) | 事業実施期間 | 交付決定後~2018年9月14日(金) |
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二次公募 | 交付申請期間 | 2018年6月中旬~2018年8月上旬(予定) | 事業実施期間 | 交付決定後~2018年11月中旬 |
三次公募 | 交付申請期間 | 2018年8月下旬~2018年10月上旬(予定) | 事業実施期間 | 交付決定後~2019年1月中旬 |
事業実施期間とは、契約・発注~実績報告提出までの期間のことをいいます。交付決定の連絡が来る前に発注・契約・支払いをしてしまうと、たとえ該当のITツールであっても補助金の交付が受けられないので気を付けましょう。
審査に加点されるポイントは4つ!
前回のIT導入補助金では、一次公募よりも二次公募の方が交付申請の採択率が大きく低下していました。正式に発表された数字ではありませんが、一次公募は90%程度採択されたのに対し、二次公募は30%以下だったと言われています。今回の補助金は予算及び採択企業数が大幅に増えてはいるものの、認知度も前回よりはあがっているため厳しい採択率だったとしてもおかしくはありません。採択されるために、出来る限りの対策をしたいものです。
実は、IT補助金の審査には加点項目があります。これは事務局が発行している交付の手引きにも掲載されている、公のものです。中には「自己申告のみ」でクリアできるものもありますので、ぜひ実施しておきたいですね。
①おもてなし規格認証2018を取得していること
「おもてなし規格認証2018」とは、高品質なサービスを提供している事業者であることを宣言する認証制度です。有償である「紫認証」「紺認証」「金認証」のほか、無償かつ自己申告の「紅認証」があります。
②地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること
地方公共団体の基本計画に基づいて事業者が策定した地域経済牽引事業計画を、都道府県が承認している場合に審査の加点となります。
③地域未来牽引企業であること
経済産業省が認定するもので、地域の活性化に貢献を期待される企業であるという認定です。
④固定資産税の特例率をゼロとする意向を表明した自治体に所属していること
固定資産税の特例率をゼロとする意向を示した自治体に所属している場合は、審査の加点となります。